2012年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

問題

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>
 表現の自由に関する基本的理解を問う設問である。基礎的設問から次第に応用的設問へと順に問うていく構成にした。どの教科書にも説明されている基本的な事柄について、たんに教科書的記述を丸暗記するのではなく自分なりの着実な理解を得ていて、自分の言葉でその理解を明晰に文章表現できれば、合格答案になるはずである。

<公法(行政法)>
 本問は、抗告訴訟の基本的な運用能力を試すものである。まず、Y市を被告とする本件建築確認の取消訴訟が考えられる。これについては、処分性および原告適格は認められること、および、不服申立て前置(建築基準法96条)を満たしていることを確認したうえで、すでに建築工事が完了しているため、取消しの利益が失われていることを指摘すべきである(最判昭和59年10月26日民集38巻10号1169頁)。
 そこで、次に、Y市を被告とする違反是正命令(建築基準法9条)の義務付け訴訟(行訴3条6項1号の非申請型義務付け訴訟)を提起することが考えられ、行訴法37条の2に規定されている訴訟要件(「一定の処分」、原告適格、「重大な損害」および補充性)の充足について検討すべきである。

<民事法(民法)>
第1問
 本問は,不用意に締結した契約の効力を論じさせることにより,契約法に関する基礎的知識を問うものである。解答の前提として,契約の効力を否定するためのありうべき論拠を一方当事者からの主張の形で提示させることにより,自らのイニシアチブによる法的議論の構築という,法曹実務家を目指す者にとって必須の素養を問うことをも目的としている。
 本問における贈与契約の効力を否定するためのYの主張としては,自然債務論,93条但書の適用,書面によらない贈与の撤回,停止条件不成就等が考えられる。いずれに関しても,Yの主張を各法理の要件に照らして具体的に構成し提示したうえで,その主張が認められるか否かにつき本問の事実に即して結論を示すことが求められる。その際には,民法の条文及び基本的判例に関する理解が必須である。
第2問
 本問は,物権法及び親族法の基礎的事項に関する理解を問うものである。
 小問1は,わが国においては不動産登記に公信力が認められないことの意味を問うものである。不実登記を信頼した者を保護する一般規定がわが国の民法上存在しないことの指摘に加え,動産の場合との相違及びその背景や,94条2項類推適用等の判例法理の形成による補完等に言及するのが望ましい。

 小問2は,(嫡出)推定の及ばない子の説明を求めるものである。772条の趣旨に照らし,形式的には同条の要件に該当しても嫡出推定が及ぶと考えるべきでない場合があることの指摘及びその場合の親子関係否定の方法に加え,その具体例等につき言及するのが望ましい。

<民事法(商法)>
 第1問は,利益供与禁止規定の趣旨に照らして,株主優待制度・従業員持株制度などが違法な行為ではなく,推定が覆されうることを説明すればよい。

 第2問は,いわゆる実体的不存在の場合と手続不存在の場合とについて,具体的なイメージを持って法制度を理解しているかどうかを問う設問である。

 第3問は,利益相反取引における間接取引と直接取引の違いについて理解しているか否かを問う出題である。

 第4問は,いったん募集株式発行の効力が発生すると,株式が流通する可能性があること,および,会社に資金が払い込まれて新たな事業活動が開始されている可能性があること,について理解しているか否かを問う設問である。

 第5問は,会社分割における分割会社には,分割された事業と(建前上)同価値の対価が支払われるという基礎的な構造を理解しているか否かを問う出題である。

<民事法(民事訴訟法)>
1.について
 貸金返還請求訴訟で同額の反対債権で相殺の抗弁がされた場合の既判力を問う問題である。民事訴訟法114条1項及び2項が正しく理解されているかが中心論点である。なお、付加的な論点として、第2訴訟の結果が「棄却」になるか、「却下」になるかという問題点もある。

2.について
 貸金の一部返還を求める一部請求訴訟でされた相殺の抗弁につき、いわゆる外側説、内側説の対立を理解しているかを問う問題である。

<刑事法(刑法)>
 本問は、簡単な事案を素材にして、問題となる行為を的確に捉えた上で、①生命・身体に対する罪の構成要件該当性判断を適切に論述する能力を有しているか、②正当防衛に関する判例・学説を正確に理解し、それを用いて事案を適切に処理する能力を有しているか、③誤想防衛の事案を理論的に適切に処理する能力を有しているか、④罪数について適切に処理する能力を有しているか、を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
 本問は、一罪一逮捕一勾留の原則について、その定義と根拠を示した上で、②の事実によるXの逮捕・勾留が、上記原則に対する例外として許されるか否かについて、事案の中から法的に意味を持つ事実を摘示しながら的確に判断することができるか、を確認することを目的とするものである。
 本問の検討に当たっては、一罪一逮捕一勾留の原則の根拠を踏まえながら、同原則における「一罪」(=「同一の事件」)の意義を明確にすることが不可欠である。仮に通説に従い、「実体法上の一罪」を意味すると考え、また①の事実と②の事実が実体法上一罪(常習傷害)を構成することを前提とすると、上記原則につき(いかなる場合に)例外が認められるかが問題となる。
 この点について、実体法上の一罪は一個の刑罰権によってまかなわれるから、捜査機関も一罪の全部について一個の身体拘束において同時に処理する義務を負うが、一罪を構成する各事実について同時処理の可能性がない場合には例外が認められる、と説明されることがある。しかし、議論を説得的に展開するには、さらに、例えば、刑罰権の個数と身体拘束の個数とが一致すべき理由はどこにあるのか、また、同時処理の可能性の有無が上記原則に例外が認められるか否かに関する実質的な判断基準だとすると、なぜさらに刑罰権の個数による制限が必要なのか、といった問題意識を持ち、これにこたえることが必要となろう。
 逮捕・勾留をめぐる諸問題(事件単位の原則、逮捕前置主義、再逮捕・再勾留の禁止、一罪一逮捕一勾留の原則など)には、基本的で重要な問題が含まれている。それぞれの原理・原則の意義と根拠、また相互関係について正確に理解し、典型的な事案における逮捕・勾留の適法性については、法的に意味を持つ事実を摘示しながら、的確に判断できることが望まれる。

<小論文>
 東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。

 問1では,「筆者」の場合と「シゲル」の場合との違いを正確に理解しているかを評価した。問2及び問3では,「ホームレスの男性」の場合と「池内くん」の場合との違いを正確に理解し,整理・分析した上で,それをそれぞれの解答に的確に反映させることができているかを評価した。また,解答の全体を通じて,文章構成力を評価した。

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