2013年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

問題

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>
 本問は,政教分離に関する判例の理解を問う問題である。本問は,いわゆる「目的効果基準」についての基本的な設問と応用的な設問とによって構成されているが,本問において特に問われているのは,政教分離に関する判例についての自分なりの理解ができているか否かである。

<公法(行政法)>
 本問は、私的自治の原則が妥当する私人間の契約とは異なり、締約強制が定められている給水契約についての理解を試すとともに、行政指導不服従に対する不利益取扱いの禁止(小問(1))および行政法規違反に対する制裁としての給付拒否の可否(小問(2))についても、理解を試すものである。「判例に触れつつ」とされているので、小問(1)では最決平成元年11月8日判時1328号16頁に、小問(3)では最判平成11年1月21日民集53巻1号13頁に、それぞれ言及することが求められる。小問(2)については、直接判断した最高裁判決はないが、上掲最決平成元年11月8日が、「給水契約を締結して給水することが公序良俗違反を助長することとなるような事情もなかった」と指摘していることから、重大な建築基準法違反のある建築物に給水することが公序良俗違反を助長すると解される場合には、適法と認められる余地があり、この点について論ずべきである。

<民事法(民法)>
第1問
 本問は、連帯保証契約の締結場面における錯誤及び親権者による代理の問題を論じさせることにより、財産法、親族法にわたる民法の基礎的知識を問うものである。解答に当たって、単に法的構成について抽象的に論じるのではなく、本問において具体的にどのような意味でその法的構成が問題となり、どのように本問の事実関係にあてはめて結論が導かれるのかを的確に表現するという、法曹実務家を目指す者に必要な能力を試すことも目的としている。
 小問1では、「動機の錯誤」が問題となることを事案に即して具体的に説明したうえで、錯誤無効の要件につき遺漏なくあてはめを行い、結論を導くことが求められる。特に、「要素の錯誤」の要件について、連帯保証契約の性質を考慮した論述ができているかが重視される。
 小問2では、親権者の代理権の範囲について、条文を含め、正確な理解を示したうえで、Dの代理行為の有効性について、利益相反や代理権濫用の成否を論じることが求められる。AがDを相続した場合の法律関係については、Dの代理行為の有効性に関して自ら導いた結論と論理的に整合する帰結を示すことができているかが問われる。
第2問
 本問は、契約法及び物権法の基礎的事項に関する理解を問うものである。

<民事法(商法)>
第1問
 株主平等原則の限界についての知識を問う出題である。株主優待制度,従業員持株制度,買収防衛策などを挙げてもらえればよい。種類株式を挙げた答案が多かったが,株主平等原則は「同じ種類の株式であれば,持株数に応じて平等に扱う」というものであり,種類が違えば不平等扱いは当然に許されるので,種類株式は,そもそも株主平等原則に抵触するものではない。
第2問
 自己株式の市場取得は,全ての株主に対し自ら保有する株式を買い取ってもらうチャンスを平等に与えるものであるから,会社法157条以下の手続のように,会社に対して株式を売却することを申し出る手続を準備する必要がない。会社財産の流出を防止し,会社債権者が保護されるから会社法157条以下の手続が不要であるとの答案が多かったが,会社財産の流出を防止する機能は,分配可能額規制が果たしているのであり,この手続が果たしているのではない。
第3問
 いわゆる主要目的ルールが採用されている根拠(たとえばニッポン放送事件高裁決定を参照)について説明してもらえばよい。ところが,主要目的ルールそのものについて説明する答案が一部に見られた。問われているのは,ルールが何かではなく,そのようなルールが採用されている理由(「…のはなぜか」)であり,問われたことに答えない答案(たとえば,出題とは無関係に「カレーの作り方」について説明する答案)は,評価されない。
第4問
 近時のオリンパス事件などでも注目が集まったように,会計監査人が経営者に甘い会計監査をしてしまうと,会社に甚大な損害を与えかねない。会計監査契約は,会社が外部の公認会計士(監査法人)と締結する委任契約であり,通常の職務執行行為であるが,経営者の意思決定に委ねてしまうと,経営者は自分に甘い会計監査をする会計監査人を選任するインセンティヴを持ってしまうからである。
第5問
 いわゆる「シナジー」が発生した場合に,その一部を株式買取請求を行使して退出していく株主にも補償してやる必要があることを説明してもらえればよい。

<民事法(民事訴訟法)>
 第1問は、法律上の推定について、まず、本証と反証の区別により証明責任の概念を一般的に問うた後、法律上の推定が働く場面で、相手方当事者が前提事実、推定事実について反対立証をする際の違いを論ずる問題である。
 第2問は、いわゆる立退料判決を巡る問題につき、まず、無条件の建物明渡訴訟に対する引換給付判決が許されるか、処分権主義の観点から問うた後、原告が請求の趣旨に提示した立退料額を下回る判決が許されるかどうか、立退料の性質(請求原因事実、借地借家紛争の非訟性等)から検討させる問題である。

<刑事法(刑法)>
 本問は、簡単な事案を素材にして、問題となる行為を的確に捉えた上で、①窃盗罪の実行の着手時期に関する判断を適切に論述する能力を有しているか、②事後強盗罪に関する学説を正確に理解し、それを用いて事案を適切に処理する能力を有しているか、③共同正犯の成立要件を正確に理解し、具体的事案に対してその知識を的確に使用して、自らの解決を説得的に論述する能力を有しているかといった点を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
 本問は、最高裁判所平成6年9月8日第一小法廷決定(刑集48巻6号263頁)の事案(一部改変)を素材として、本件捜索差押許可状に基づく種々の「捜査活動」(捜索活動ではない)を中心に、その法的根拠及び要件を挙げた上で、事案の中から法的に意味を持つ事実を抽出しながら、それぞれの活動の適法・違法を判断することができるか、を確認することを目的とするものである。
 なお、問題末尾に、「Xに対して前記捜索差押許可状を示すまでの手続の適法性については問題がないものとしてよい。」との条件を付してあるため、検討の主たる対象となるのは、令状に基づくボストンバッグの捜索、Xからボストンバッグを取り上げる措置、令状に基づく覚せい剤の差押え、及びXの現行犯逮捕と考えられ、まずは、それぞれの活動について、その法的根拠及び要件を挙げることが必要となろう。
 さらに敷衍すると、例えば、①捜索すべき場所に置かれていたボストンバッグは令状に捜索すべき物として記載がなくても捜索することが許されるか、②ボストンバッグを捜索するためにはいかなる要件を満たす必要があるか、③ボストンバッグをXから取り上げる行為は、いかなる趣旨で、またいかなる法的根拠に基づいて行われているのか、④Xの抵抗を制圧するために用いられた有形力(強制力)は相当であったといえるか、⑤令状発付の基礎となった被疑事実とボストンバッグから発見された覚せい剤との間にはいかなる関連性が認められるか、⑥本件現行犯逮捕において犯罪の明白性の要件は満たされているか、などが問題となるであろう。
 前記判例の事案は一見単純なものに感じられるかもしれないが、そこに含まれる種々の活動の法的根拠や要件を個別に検討する際には、捜索・差押えについての理解が正面から問われることとなる。
 日ごろから、条文や判例を出発点として、問題の所在を的確に捉え、丁寧に解釈論を展開することを心がけながら学習を進めていただきたい。

<小論文>
 東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。
 問1は,筆者の主張の核となるものを正確に理解し,簡潔に短文でまとめることができているかを評価した。問2では,筆者がその主張の根拠とするところを的確に把握,整理し,理論的に説明できているかどうかを評価した。問3は,問1及び問2の解答を踏まえ,筆者の主張に対する批判の根拠を明確に示したうえで,説得的に論じられているかどうかを評価した。また解答の全体を通じて,文章構成力を評価した。

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