2015年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

問題

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法行政法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>
 本問は,表現行為に対する事前抑制および憲法21条2項の禁止する「検閲」に関する判例を理解できているかどうかを問うことを目的としている。
 北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)において,最高裁は,「表現行為に対する事前抑制は,表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし,厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」と述べている。問1においては,最高裁が,どのような考えから「表現行為に対する事前抑制は……厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」としたのかを,憲法21条2項の「検閲」を最高裁が狭く定義していること(最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁〔税関検査事件〕)との関係にも触れながら,説明することが求められている。
 問2から問4においても,判例の考えを的確に説明することが求められている(問2については北方ジャーナル事件を,問3においては税関検査事件を,問4においては第1次家永訴訟〔最3小判平成5年3月16日民集47巻5号3483頁〕をそれぞれ参照)。

<公法(行政法)>
 本問は、具体的な事案および個別法を素材として、届出および不受理の法的性格についての基本的理解を確認した上で、不受理に対する訴訟上の救済方法について、運用能力を試すものである。まず、道路交通法(以下「法」という)98条2項の届出が適法に行われた場合の法的効果について、①運転免許または仮免許の技能試験免除のための卒業証明書または修了証明書を発行し得る指定自動車教習所として指定を受け得ること(法99条1項、99条の5、97条の2第1項2号)、②届出をした自動車教習所の所在地の公安委員会に仮免許の申請をし得ること(法89条1項)、および、③法98条3項による公安委員会の指導または助言を受け得ること、を指摘すべきである。そして、法98条2項の届出に対して公安委員会が諾否の応答をすべきことを定めていると解される規定はない(法99条1項の指定は職権による処分であって、法98条2項の届出に対する諾否の応答ではない)から、届出が形式上の要件に適合していれば、届出の公安委員会への到達によって、届出の法的効果が生じる。これに対し、届出が形式上の要件に適合していない場合には、届出の法的効果は生じないが、これは、届出が客観的に形式上の要件に適合しているか否かによって決まるものであり、公安委員会による受理・不受理の判断によって左右されるものではない。したがって、Y県公安委員会による本件届出の不受理は事実上のものであって、取消訴訟の対象となる処分に当たらない。本件における適切な訴訟上の救済としては、本件届出が適法に行われたことの確認訴訟(行訴法4条)が考えられ、本件届出により上記①〜③の法的効果が生じ得ることを踏まえて、確認の利益の有無につき検討すべきである。

<民事法(民法)>
第1問
 本問は、民法上の基本的事項に関する理解を問うものである。
 小問1は、胎児には権利能力がないことが原則であることを根拠条文と共に指摘したうえで、不法行為及び相続の分野に置かれている例外規定の内容及びその趣旨に言及するのが望ましい。
 小問2は、民法478条を摘示し、「弁済の受領権限を有しないにもかかわらず、有するかのような外観を呈する者」との定義を挙げて、そのように定義される趣旨を具体例と共に説得的に述べることが望ましい。
第2問
 本問は、親族間におけるあいまいな意思表示による借家をめぐる権利関係の設定、変動につき、相続承継を介して問題が生じた場合を素材に、所有権の取得を主張する観点から、複数の法律構成を発見し、適用する能力を試すものである。
 Dによる甲建物の所有権取得の主張として考えられる法律構成としては、贈与契約、Bの占有と併せた20年間の占有を理由とする取得時効、D独自の占有による10年間の取得時効があるところ、それぞれについて、要件を正確に理解し、〔事実〕に挙げられた事実関係に当てはめて、結論の方向性を示すことが求められる。AがB及びDに甲建物の管理を委ねていたことが法的にどのように評価されるかが鍵であり、この点について一定の見解を示したうえで、贈与の成否や占有の性質について、整合性のある論述ができていれば、高い評価となる。

<民事法(商法)>
第1問 単元株式制度の限界について,その趣旨の理解を問う出題である。
第2問 取締役会の承認がないにもかかわらず,代表取締役による重要な財産の処分がなされた場合の処理について,判例の処理(あるいは学説でも可)の知識を問う出題である。
第3問 近時の株主提案権行使の濫用事例が,会社法上どのように処理されるべきかについての考察を問う出題である。
第4問 いわゆる経営判断原則の適用の限界事例についての理解を問う出題である。
第5問 いわゆる会社の基礎的変更の一つである事業譲渡において,株主の保護が要求されている趣旨についての理解を問う出題である。

<民事法(民事訴訟法)>
 1.【小問1】では、民事訴訟法114条1項の規定する既判力の客観的範囲についての、【小問2】では、民事訴訟法115条1項2号を例として既判力の主観的範囲についての基本的理解を問う問題である。
 2.は、民事訴訟法116条2項により確定した判決について、既判力の時的範囲の観点から論じさせる問題である。

<刑事法(刑法)>
 本問は、簡単な事案を素材にして、①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、②窃盗罪の成立要件(特に、占有の意義、不法領得の意思)の正確な理解の有無、③暴行後に領得意思が生じた場合について、強盗罪の成立要件を踏まえて適切に処理する能力の有無、④共同正犯の成立要件(特に、共同実行の意思〔共謀〕の内容)の正確な理解の有無、⑤不作為の共犯に関する知識を的確に使用して、事案を適切に解決する能力の有無等を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
 本問の事案は,いわゆる別件逮捕・勾留が問題となった著名な下級審判例である,大阪高判昭和59・4・19高刑集37巻1号98頁をもとにしたものである。
 設問1については,さしあたり,どのような教科書にも紹介されている基本的な考え方(とりわけ下級審判例において採用されている本件基準説と別件基準説)のいずれかに依拠したうえで,それを具体的な事案に当てはめれば足りる。
 設問2については,前掲・設問1についてどのような見解をとるにせよ,別件逮捕・勾留中の自白の証拠能力については,自白法則ではなく,違法収集証拠排除法則の適用を論ずるのが判例の立場であるから,その点に言及する必要がある。

<小論文>
 東北大学法科大学院は、法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では、法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力、すなわち、資料を正確に理解し、整理・分析してその要点をまとめ、それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。
 今年度は、論旨が比較的明快な文章を取り上げて、これを正確に理解・咀嚼して筆者の主張を自らの言葉で説明できるかを評価した。問1では、課題文を、要点を押さえながらバランス良くまとめることができるかを評価した。問2では、「限界」と「問題点」として筆者が論じ分けている内容の質的違いを説明できているかを評価した。問3及び問4は、課題文におけるやや抽象的な叙述の意味を筆者の論述の展開から読み取り、それを正確に説明できているかを評価した。また、解答の全体を通じて、文章構成力を評価した。

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