2017年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

一般選抜(前期)

第2次選考:一般選抜(前期)法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

出題趣旨

<公法(憲法)>
 本問は、わいせつ表現の規制に関する基本的な憲法の知識と理解を問うものである。
 問1では、刑法の規定文言に即して憲法的問題把握を行うことを求めた。また、憲法教科書の、「表現の自由」に関する総論部分の叙述と、わいせつ表現規制に関する各論部分の叙述とを、関連づけて説明することを求めた。
 問2では、わいせつ表現規制に関するリーディング・ケースの基本的理解を問うた。答えるよう期待されたことの中には、事件名や、本判決が憲法論を行う前に刑法上の「わいせつ」定義を行っている点が、含まれている。

<民事法(民法)>
第1問 いわゆる「背信的悪意者からの転得者」の問題について、物権変動論の基本構造に即した検討を求めるものである。それぞれの法律構成(無権利者からの譲受人事例と見るか対抗問題事例と見るか)を踏まえたうえで、理論的観点(背信的悪意者排除法理の意義・位置付け)・実質的観点(結論の妥当性)から比較することが求められる(どちらの見解を支持するか自体は答案の評価を左右しない)。
第2問 債権者代位権及び詐害行為取消権について一般に指摘される「事実上の優先弁済効」の理解を問うものである。いずれについても、その具体的メカニズム(債権者自身への引渡し、返還債務の発生、被保全債権との相殺)と射程を把握しているかが問われる。
第3問 典型担保物権たる抵当権と質権の共通点(優先弁済的効力、約定担保物権等)と相違点(占有移転の要否、対象財産等)という担保物権法の基本的知識を問うものである。
第4問 権利移転型契約を題材として有償契約と無償契約の相違を問うものである。撤回可能性や担保責任等につき、条文に即した説明が求められる。
第5問 嫡出子と非嫡出子の扱いの相違(法律上の父子関係、親権者、氏等。なお、相続分の相違はすでに廃止されたことに注意)という家族法の基本的知識を問うものである。

<民事法(商法)>
第1問
判例法理においては,役員等の職務懈怠により,第三者が直接に損害を被った場合(典型例は取り込み詐欺)が「直接損害」であり,役員等の職務懈怠により,会社が損害を被り,それによって第三者が債権回収不能・株価下落などの損失を被った場合(典型例は放漫経営)が「間接損害」であるとされている。本問は,判例法理に関するこのような基本的な理解ができているかどうかを問うた問題である。
第2問
株式発行無効の訴えには,無効事由が法文上定められていない。一般的には,株式発行後には,株式の流通の保護および会社に払い込まれた資金に基づいてなされている事業をめぐる取引安全のために,重大な法令定款違反のみが無効事由になると解されている。判例法理は,株式発行の瑕疵は,できるだけ差止の訴えによって効力発生前に処理すべきという考えをとっているため,差止の機会を失わせるような通知公告の欠缺は原則として無効事由になるとしているが,それ以外の手続的な瑕疵については,無効事由にならないと解している。本問は,判例法理に関するこのような基本的な理解ができているかどうかを問うた問題である。
第3問
社債管理者は,少額かつ多数にのぼりがちな社債権者の保護のために,設置の強制が求められている。しかし,社債権者の保有する社債金額が一定以上であれば,そのような債権者は,債権保全のための行動を自らとる能力があると期待できるし,債権者の数が少ない場合には,社債権者が互いに協力することで,フリーライド問題を解決することが期待できる。このため,社債管理者の設置強制が外されている。本問は,このような制度趣旨に関する基本的な理解ができているかどうかを問うた問題である。
第4問
会社分割において分割会社に残る残存債権者については,2015年改正前の会社法においては,債権者異議手続の対象になっておらず,株式分割無効の訴えの原告適格もなかった。これは,会社分割においては,承継会社・新設会社から分割会社に対し,移転された事業の対価が支払われているため,分割会社の保有する財産(純資産)の総額に影響はないと考えられていたからである。しかし,実際には,このような会社法の構造を「濫用」して,優良資産のみを承継会社・新設会社に移転し,分割会社には,換価が困難な資産を移転するような取引が多く行われた。このような濫用的会社分割に対処するために,2015年改正で導入されたのが,濫用的会社分割における残存債権者保護の規定である。本問は,このような制度趣旨に関する基本的な理解ができているかどうかを問うた問題である。
第5問
いわゆる現物出資においては,金銭と異なり,会社に出資される財産が過大評価されてしまうと,ほかの出資者との間で不公平が発生する危険がある。そのような事態を避けるために,会社法は検査役調査を要求している。本問は,このような制度趣旨に関する基本的な理解ができているかどうかを問うた問題である。

<民事法(民事訴訟法)>
 1.は、消極的確認訴訟における訴訟物の把握に関する問題である。(1)では、原告(債務者)と被告(債権者)が争う部分とが一致しており、結果的に債務(債権)の全体が訴訟物となるが、(2)では、債務者(原告)が自認する部分は訴訟物とはカウントされず、債権者(被告)の主張上限から債務者(原告)の自認額までの間が訴訟物となる。
 2.(1)は、債務不存在確認訴訟に同一の債権で給付訴訟が反訴として提起された場合の問題であり、結果として、先行の債務不存在確認訴訟の確認の利益がなくなり、本訴却下、反訴認容となる。2.(2)は、当該債権=債務の弁済期が未到来の場合であるが、一時的棄却判決として反訴棄却になることは明らかであるが、本訴の取扱いについては定説がなかろう。弁済期未到来であれば本訴棄却という処理もできなくはないと思われるが、やはり、確認の利益の観点から本訴却下とするほうがよいであろう。

<刑事法(刑法)>
本問は、簡単な事案を素材にして、
①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、
②知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無、
③傷害罪の成立要件に関する正確な理解の有無、
④詐欺罪と恐喝罪の区別に関する正確な理解の有無、
⑤間接正犯と共同正犯の区別に関する正確な理解の有無、
⑥共同正犯の成立要件に関する正確な理解の有無、
等を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
本問は,訴因変更の要否に関するリーディング・ケースである最(三小)決平成13・4・11刑集55巻3号127頁をアレンジした事例問題である。訴因変更の要否につき,同決定が提示した3段階の判断基準に即して検討することが求められる。

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