2017年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

一般選抜(後期)

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>
 本問は,いわゆる法廷メモ訴訟の最高裁判決を理解できているかどうかを問う問題である。
 本判決は,裁判の公開を定めた憲法82条1項の趣旨を「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすること」と捉え,「情報等に接し,これを摂取する自由」は憲法21条1項の「趣旨,目的から,いわばその派生原理として当然に導かれる」とし,さらに,「さまざまな意見,知識,情報に接し,これを摂取することを補助するものとしてなされる限り,筆記行為の自由は,憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである」としている。小問1,小問2および小問3においては,これらのことを的確に説明することが求められている。
 小問4の検討に際しては,最高裁が,博多駅事件(最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁)以来,「事実の報道の自由」は憲法21条1項の保障の下にあるとし,さらに,「報道のための取材の自由」は憲法21条の精神に照らし「十分尊重に値する」としてきたこと(これらのことは本判決においても述べられている)を踏まえていることが必要となる。

<民事法(民法)>
〔第1問〕いわゆる「権利外観法理」について、その内容と適用のされ方の基本的な理解を問うものである。同法理の概括的な枠組みを示すだけではなく、具体的な規定(109条、192条、478条等)を挙げ、同法理の趣旨を踏まえつつその内容を具体的に説明することが求められる。
〔第2問〕ある者が他人の未登記建物を第三者に売却した場合について、「ある者」が代理人と称した場合とそうでない場合とを対比させることを通じ、分野横断的な民法の理解を問うものである。無権代理と他人物売買の規律の違いを条文に即して、整理して示すことが求められる。
〔第3問〕抵当目的物たる土地を担保として譲り受けた者による、抵当権の被担保債権の消滅時効の援用権の有無を問うものである。援用権者の範囲を画する基準を定立したうえで、譲渡担保の法的性質(所有権移転の形式を重視するか、担保目的の実質を重視するか)に応じたあてはめを行い、結論を導くことが求められる。
〔第4問〕金銭債務の債務不履行に関する規律の特則性(419条各項等)とその根拠という債権法の基本的な知識を問うものである。
〔第5問〕特別養子縁組と普通養子縁組の要件及び効果の相違(当事者の年齢要件、養親の婚姻関係、家庭裁判所の関与の仕方、離縁の要件の違い、実方との断絶の有無等)という親族法の基本的知識を問うものである。

<民事法(商法)>
第1問 同じく会議対である株主総会と取締役会における特別利害関係人の取扱いの違いを理解しているかどうかを問うものである。
第2問 株主総会決議取消判決の効力と取引の安全を確保するための法的構成について理解しているかどうかを問うものである。
第3問 募集株式の発行を決定する権限の所在に関し、公開会社と非公開会社とではどのような規律の違いがあるか、理解を問うものである。
第4問 株主総会決議を要する「事業の譲渡」(会社法467条1項1号・2号)の意義を理解しているかどうかを問うものである。
第5問 いわゆるキャッシュ・アウト(金銭を対価として少数株主を退出させること)を行う方法を理解しているかどうかを問うものである。

<民事法(民事訴訟法)>
 1.では、双務契約における同時履行の抗弁権が抗弁として主張された場合に、引換給付判決という質的な一部認容判決がされる。この訴訟物は原告の請求権のみであること、また、一部認容判決は同時に一部(他部)棄却判決になることに注意する必要がある。
 2.(1)では、所有権の来歴経過が問題となるとき、所有権の存否は、その取得原因事実であるため、XにとってA・W間の売買契約とWの死亡による相続開始とが権利発生事実となるため、Xの証明責任となる。2.(2)では、取得原因事実より以降の法律行為について、所有権喪失の抗弁として、相手方当事者が主張・証明責任を負うとする判例(最判昭和55年2月7日民集34巻2号123頁)がある。

<刑事法(刑法)>
本問は、簡単な事案を素材にして、
①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、
②知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無、
③傷害罪の成立要件に関する正確な理解の有無、
④強盗罪の成立要件に関する正確な理解の有無(特に、暴行後の領得意思が問題になる事案について事案に即した的確に解答することができるか否か)、
⑤強盗致傷罪の成立要件(特に、同罪における暴行がなされるべき時期)に関する正確な理解の有無、
⑥教唆犯と幇助犯の区別に関する正確な理解の有無、
等を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
本問は,再逮捕・再勾留の要件に関するリーディング・ケースである東京地決昭和47・4・4刑裁月報4巻4号891頁をアレンジした事例問題である。再逮捕・再勾留の可否につき,同決定が提示した判断基準に即して検討することが求められる。

<小論文>
 東北大学法科大学院は、法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では、法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力、すなわち、資料を正確に理解し、整理・分析してその要点をまとめ、それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。
 今年度は、科学技術の歴史的展開に関する文章を取り上げ、これを正確に理解した上で、筆者の主張を的確に説明できるか否かをみた。問1、問2では、傍線にかかる筆者の歴史的分析を、文章全体の論旨に即して説明できているかどうかを評価した。また、解答の全体を通じて、文章構成力を評価した。

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