2018年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について

一般選抜(前期)

第2次選考:一般選抜(前期)法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

出題趣旨

<公法(憲法)>
 本問は、いわゆる「沈黙の自由」に関する基本的な憲法の知識と理解を問うものである。
 大多数の憲法教科書は、憲法19条の保障内容の一つとして「沈黙の自由」を挙げている。同時に、「沈黙の自由」一般はむしろ21条によって保障されるのであり、19条に基づく「沈黙の自由」は、そのなかの一部についてより強力な保障を与えるものだと説明されている。本問は、(a)と(b)の2つの事例に即して、上記2つの「沈黙の自由」について論述することを求めた。

<民事法(民法)>
第1問 期限に関する基本的理解を問うものである。債務者の期限の利益およびその放棄と喪失について、具体的に説明をすることが求められる。
第2問 通常の共有と組合員による組合財産の共有という類似の制度についての比較を行わせるものである。持分の有無や目的による拘束の強弱等について、それぞれの趣旨を踏まえつつ、具体的に説明することが求められる。
第3問 特定という制度について、その制度の前提となる特定物と種類物という概念とともに、その基本的理解を問うものである。特定物と種類物という概念の意味を正確に述べ、特定による効果をその制度趣旨を踏まえつつ説明することが求められる。
第4問 建物の瑕疵が原因で生じた損害の損害賠償請求の方法について、簡単な事例を素材に検討させることにより、債務不履行責任と不法行為責任、一般の不法行為責任と工作物責任、それぞれの関係に関する理解を問うものである。CとAまたはBとの間の契約関係の有無に応じて、工作物責任および賃貸借契約上の債務不履行責任に基づく請求の可能性を中心に論じることが求められる。
第5問 婚姻解消事由である離婚と夫婦の一方の死亡のそれぞれが氏および姻族関係に生じさせる影響についての基本的知識を問うものである。いずれも条文に明記された内容であるが、姻族という基本概念を理解したうえで、両者の違いに即して体系的に整理できているかが問われる。

<民事法(商法)>
第1問
 会社法130条2項の趣旨は,会社に対して権利行使をすることができる株主を確定するという事務処理の便宜を図るためであるが,会社側がその利益を放棄し,真の株主でない者を株主として取り扱ってしまうことのリスクを進んで引き受けるのであれば,会社が譲受人に権利行使させてもかまわないと解されている。
第2問
 取締役会の決議を経ずして代表取締役が行った取引行為は原則として無効となるが,それでは,決議の有無を必ずしも知り得ない相手方の取引安全が実現できない。そこで,相手方の保護を実現するためにさまざまな見解が主張されているが,判例は,民法93条但書を類推適用し,相手方が取締役会決議の欠缺について悪意または有過失の場合にのみ,会社は無効主張できると解している。
第3問
 株式会社の株主は有限責任しか負わないから,会社債権者は会社財産に対してしか(原則として)執行することはできない。このため,分配可能額規制として,資本金等の額以上の純資産が会社に残っている場合にしか会社財産の分配を認めないこととしないと,会社が債務超過に陥るリスクが高まり,会社債権者が害されてしまうからである。
第4問
 単なる財産の譲渡であれば株主総会特別決議は不要だが,事業譲渡について必要とされるのは,単なる財産と違って,「事業」は,将来にわたってキャッシュフローを生み出す会社の利益の源であり,これを再構築するにもコストがかかるから,会社の運命に大きな影響を与える行為=基礎的変更だからである。
第5問
 他の株主について招集手続の瑕疵があっても,その株主が株主総会において出席したり意見を述べるなどして活躍するなどすると,決議の帰結が変わってくる可能性があるから,他の株主に対する招集手続の瑕疵も,決議取消事由として主張することが可能であると考えられている(ただし裁量棄却の余地はある)。

<民事法(民事訴訟法)>
 1については、X(正確にはXの訴訟代理人)が誤って被告を取り違えて貸金返還請求訴訟をした場合に、表示の訂正が認められないことは、訴状に被告と記されたYと、Xの意図では真の被告のZとの同一性が否定されたと言うことを念頭に置きつつ、現在の給付請求の場合、当事者適格の問題を論ずるまでもなく請求適格は存するのであり、請求原因事実がYに対する貸金債権を生じさせるものでない以上、請求は棄却となる。
 2(1)については、確認の利益に関する基礎的な問題であり、判例がどのような角度から確認の利益を判断するのかを問う問題である。(2)については、確認の利益について裁判上の自白が成立するかを問う問題であるが、第1審裁判所と控訴審裁判所で本件における確認の利益について、法解釈上、異なった見解に立つものであり、第1審で主要事実とされた事実が、控訴審では主要事実ではなく、全く異なった事実であるとも考えられる。確認の利益が評価的要件(規範的要件)であることから考えると、一般論として裁判上の自白が成立するものではないと考えたうえで、あてはめを論じてゆかなければならないだろう。

<刑事法(刑法)>
 本問は、簡単な事案を素材にして、
①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、
②知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無、
③傷害罪・傷害致死罪の成立要件に関する正確な理解の有無、
④正当防衛及び量的過剰防衛に関する正確な理解(関連判例の知識・理解を含む)の有無、
⑤強盗罪及び窃盗罪に関する正確な理解の有無、
等を確認することを目的としたものである。

<刑事法(刑事訴訟法)>
 本問は,刑訴法328条の意義に関するリーディング・ケースである最(三小)判平成18・11・7刑集60巻9号561頁をアレンジした事例問題である。刑訴法328条により許容される証拠につき,同判決が提示した判断基準に即して検討することが求められる。

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